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ちが協力してくれたおかげでオレも大学では成績上位で、トントン拍子に獣医学部に入ることができた。また学部移行後初めての解剖学口頭試問で、厳しいと評判の試験官が、高校時代にオレたちのラグビーの試合で審判をやっていた人でね。級友がバタバタと落第する中、なぜかオレの名前が合格者の中にあったんだ。
そして、10 年に一度あるかないかの旭山動物園の獣医募集がオレの卒業年に出た。今の自分がいるのは、あの時義男たちとラグビーをやっていたおかげ。そこから生まれた数々の出会いがなければ、今の旭山動物園もきっとなかった。
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煖エ |
俺たちが一緒に戦ったのはせいぜい3カ月くらい。そこでできたつながりがさらにたくさんの未来をつくったんだな。俺も最近、人と人との関わりの不思議さやすごさを感じることがよくあるんだ。診てきた子どもたちやその家族に、数年後、数十年後、思わぬところでお世話になったりする。そして驚くような再会から、また新しい化学反応が起きる。それが集団で生きる動物(にんげん)なんだ。
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小菅 |
人生に無駄なことは何ひとつないと自信を持って言える。可能性はいくらでも広がる。人とのつながりがまた、可能性を拓く力になってくれる。人生を生き抜いていく力になるんだ。
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飯田 |
でも、最初からそんなことを考えて付き合ってはいなかった。損得を考えて接していたらきっとこういう未来はなかったね。助っ人してた当時はただただその状況に真剣だっただけだけど、そのひたむきさ、純粋さが良い結果に結びつくんだよな。
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煖エ |
嘘やごまかしがあると、いつか破綻するよ。人と関わり、つながることの大切さは変わらない。時代が変わり教育も変わったけど、よりよく生きるために大切なことは今も昔も同じさ。だから、次の世代にしっかり伝えていかないといけない。
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小菅 |
そのために、まだまだやるべきことがたくさんあるな。飯田も頑張ろうぜ。
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飯田 |
まあ、うちの会社はオレがいなくても、もう大丈夫だと思うんだがな。
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小菅 |
いやいや、引退しようとしたら絶対に部下たちに引き止められるよ。飯田の部下は言うんだよ。「飯田さんがいなかったらまた会社はダメになる。うちにはあの人が必要だ」ってね。そこまで社員に愛され、必要とされるのはすごいことさ。必要とされるうちは頑張らないと。
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