高橋 |
ネガティブなことを言っても意味がないからね。常にプラスになる点を探そうと思っている。標の場合も、ちょうど短くなったシャントを離脱するためのシャントに交換する時期で、ついでにお腹の中もきれいに治せばいいと思った。なんでもチャンスとして捉えるのが俺の考え方だね。
|
瑞穂 |
開口一番「ラッキーだわ」なんて言ってもらえると、親としては本当にホッとします。
|
高橋 |
医者は患者さん側に、あまりいいことを言わないのが普通。でも俺は自分が医療者である限り、難しくても患者を助けないと意味がないと思っている。結果を出すことが何よりも大切で、それを自分にノルマとして課すんだ。
俺の考えでは、たまたま今ある技術で治せないだけで、不治の病なんてあり得ない。必ず結果が出ると信じている。標の場合、オープンリップという両側の脳組織が開いているタイプで、特に重度とされるケースだった。でも、それを伝えてシリアスになるより、不可能を可能にする方法を探すのが俺のやり方。そのためには、一緒に闘っていく親のことも知っておくことが重要だと思っている。「どんなことをやってた」と聞くのもそのため。標の父さんと母さんはずっとスポーツをやってきて、不可能とされる状況でも覆すことができることを経験として知っていた。そういう意味で、俺にとって標の親たちは絶好の「相棒」だったんだ。
|
瑞穂 |
出身校まで聞かれました。標の症状の話よりも熱心でしたよね(笑)。先生はうまいな、と思うのは、父親をうまく巻き込んでくれること。母親と子どもは一対一になりがちだけど、そこに父親が参加するように仕向けてくれる。うちが自然にそうなったのも、高橋先生の力だと思いますね。
|
高橋 |
基本的には、父親も兄弟も家族みんなを巻き込んで、一緒にやっていこう、というのが俺の考え。みんなでやろうぜ“俺たちの甲子園”ということ。
|
瑞穂 |
そのおかげか、私もあまり悩まずにすみました。むしろ父ちゃんの方が深く考えてくれて、何か疑問に思ったらそこで高橋先生と話して、すぐに解決してくれていました。
|