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芳弓さんは、ご自身の境遇をご存じだと聞いています。
いつ、どのように知ったのですか? |
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芳弓 |
母子手帳を見たら今と違う名字が書いてあって、「あれ?」って。そういうのが積み重なって、小学校高学年の時に聞いたんです。その時、本当のお母さんに手紙も出しました。
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紀久子 |
会いたかったんだよね。返事はなかったけど……。
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芳弓 |
うん。あの時は会いたかった。だけど今は、あんなことしなきゃよかったって後悔してる。今のお母さんに申し訳なかったって……。私のお母さんは今のお母さんで間違いない。私のために何でも一生懸命がんばってくれて、できないことは代わりにやってくれる。私は今のお父さん、お母さんが好きで、離れるなんて考えられないもん。
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橋 |
そうか。今まではお父さん、お母さんが芳弓のためにがんばってきたから、これからは芳弓がいっぱい勉強して、挑戦して、可能性を広げることで恩返ししていかないとな。例えば今までの経験を本にして、たくさんの人に伝えてもいい。
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義幸 |
芳弓の人生は波瀾万丈だからおもしろいかもしれないね。生まれてすぐ入院して、それからずっと病院の中にいたから、家に来たばかりの頃は何にでもびっくりしてた。5歳なのに犬も車も鏡も雪も見たことがなくて、太陽にまで驚くくらい。そういう芳弓だからこその感覚や体験談は、他の人が聞いたら新鮮だろうな。
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橋 |
芳弓が生きていることがもう奇跡なんだけど、「まだまだこんなにいろんなことがやれる」ってことを世の中に伝えてほしい。芳弓にしかできない仕事だし、親孝行になると俺は思うんだ。
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芳弓 |
はい! お父さん、お母さんに、恩返ししていきます。
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紀久子 |
まあでも、私は芳弓が元気でいてくれれば、ほかに何にもいらないですよ。小さかった頃を思い出せば、今こうして命があるだけで十分。ケンカもしたし反抗期だってあったけど、でも、どんな家族でもいろいろあるのは一緒ですしね。
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義幸 |
大変なことももちろんあったけど、私たちは子どもがいなければできない経験をたくさんさせてもらった。だから芳弓の存在そのものに感謝しているんです。
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橋 |
そういえば、今日会って思ったけど、芳弓とお母さん、顔が似てきてないかい?
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紀久子 |
あら、最近よく言われるんです。小さい頃はお父さん似って言われてたのにね。
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橋 |
顔も似ているし、性格も、間違っていることをはっきり指摘するところを受け継いでいるよ。俺は3人に、家族は「なる」んじゃなく「つくり上げる」ものなんだと教えてもらった。手島家を見ていると、法律や血縁によるつながりだけじゃなく、一人一人の努力の上に成り立っていく関係性こそが、「家族」なんだと強く感じるんだ。 |
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「家族」は、支え合い助け合い、共に闘っていく仲間の呼び名なんだと俺は思う。だから俺にとって手島家は最高の「仲間」のかたちであり、人の生き方の手本として、これからも見習っていきたい存在なんだ。
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「義男の空」第8巻の巻末の
「巻末特別対談」に収録されて
います。是非ご一読ください。 |
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